少し前から,東京の女子高生の間でインチキ方言が流行っていると話題になっている.
他愛のないことで結構だと思う.
ところがインチキ,いや,真似事に過ぎないので,アクセントやイントネーションによる真の面白さまでは作り出せない.
方言,いや,お国訛りで面白いところは音便化に伴うリダクションである.
タモリ氏や武田鉄矢氏が博多弁で「ととと」や「すすす」で済むことがあると昔からテレビ番組でよく言っている.
大阪弁で類する面白い語感で同様に昔からよく言われているのが,茶色い大型のムク犬を目の前にしているシチュエーションがある.
A:「なーなー,あの犬,チャウチャウちゃう?」(ねえねえ,あの犬,チャウチャウと違う?)
B:「え~?チャウチャウちゃうんちゃう?」(え~?チャウチャウとは違うんじゃない?)
これはよく聞く話だと思うが,私が今,押したいのはナ行繰り返し語である.
「なんなん」「ねんねん」「のんのん」である.残念ながら(~)「にんにん」「ぬんぬん」は無い.
「にんにん」は忍者ハットリくんにお任せする.
シチュエーションとしての用例は,自動車数台で男女混合でスキーに行ったとする.
夜中に出発して夜明け前に目的地に到着し,仮眠を取ろうかというときに出てくるだろう.
男女が同じ車内で眠ることに多少差し障りがあったとして,グループ内の車で人が移動する.
窓ガラスをノックしたのに車内の者が気付いて「何なん,乗んのん?」
車外の者は「寝んねん」という具合である.
すなわち,
「なんなん」は「何なん?」(何なの?)
「ねんねん」は「寝るねん」の音便化で「寝るんだよ」
「のんのん」は同様に「乗るのん?」の音便化で「乗るの?」
「~ねん」は「~だよ」の意味の接尾語でこれを入れるとナ行の動詞が俄然面白くなる.
関西以外の方々,次のフレーズ,どういうシチュエーションか一度考えてみてもらいたい.
『なんにんぬんねん』
(ヒント:うんざりして絶叫してみると理解できるかも)
標準語的に訳すと
『何人(分)塗るんだよ!~』
となる.
例えば,予防接種か何かで消毒剤を塗る作業をするのは良いが,果てしなく行列が続いていつ終わるか分からずうんざりするようなシチュエーションを考えてみればいいだろう.