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縦に書け!横書きが日本人を壊している

著者:石川九楊 祥伝社刊

この本に述べられていることに賛同しながら,PCでインターネットを介したブログにその感想をしたためる,というのは自己矛盾を生じているという思いを禁じ得ないが.
書店で挑発的な題名とそれを強調する単純な表紙が非常に目を惹いた.
帯に書かれていることが極論に思えて,そういうのを読んでみるのも良かろうと思って購入して読んでみた.
各論それぞれについては,納得できない部分もあるし,自分はそうではないと思った部分も少なからずあった.
筆者の主張もよくわかるが,氏はまったくPCも携帯電話も触らない.触ってから両方の特性を論じてほしかったと思う.
筆者は書家であり,手で文字を書くことについての造詣は非常に深くある.
それに縦書きを強調されているが,数式を扱う技術文書はどうするのだと思いながら読み進めて行くと結局は例外扱いされていた.
英語,数学(算数)と理科以外の教科書は縦書きにせよとは,もっともだと思う.
確かに私が小学生の頃の教科書は国語以外にも社会科は縦書きで,中学校に進学して社会化教科書が横書きになっていたことに違和感を感じた覚えがある.

筆者の主張では,言葉を扱うのにキーボードを打つという動作変換の不自然さが現れているということである.
その主張もわかるが,私個人のことを述べると,このブログ用の文章を打っている時の思考は,筆者が主張する“手書きで文章を考える際の思考展開”と何ら変わらないと思っているが.

本書にも述べられていると同時に最近強く思うのであるが,新聞の記述がますます深みがなくなっているように思えてならない.
特に朝日新聞の「天声人語」は私から見ても質が落ちたのは明らかである.私がこのブログで書いているほうがよほど中身があるのではないかと思うほどである.
本論は,横書きをすることに重きを置いて非難しているのではなくて,産業の道具としては十分にその効果は認めるが子供にケータイ,PCを触らせるなということである.
何度となく私も主張しているが,デジタル万能ではない.人間は基本的にアナログ活動をするものである.
極論を読んで批判するつもりだったのであるが,少々,納得できない部分はありつつも,結局,私の意見と異口同音だったわけである.

私自身も携帯電話やPCを利用しているが,子供の頃にこんなものがあったらかなり難儀なことになっているのではないかと自分で感じている.

そもそも,なぜこの本が目に止まったかというと,日本語の横書き表記について興味があったからである.
昔の横書きは,右から左へ書き進めると思っている向きも多いかもしれないが,それは誤りである.
右から左へ書き進めるのは,一行一文字の縦書きである,という根拠を探したかったのである.
あくまで横書きは左から右である.
一見,横書きに見える,額の書などを見る機会があれば注意してよく見ていただきたい.必ず左端に記されている銘と落款は縦書きである.

しかも,戦後まもなくの新聞一面の中よりも少し下の広告で見たことがあるのは,
例えば,本来は,
すまいざごうとがりあ
となるところを横幅が足りない場合に,
ごうとがりあ




と記されており,決して
うとがりあ
すまいざご

と二段にはならないのである.もし右から左表記が横書きならばこうなるべきであるが,こういう例はない.(ただし後年の誤解によるものは存在する)

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2005年8月30日 19:18に投稿されたエントリーのページです。

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