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読むつもりの歴史小説

先日,仕事帰りに書店に寄ると,少し探していた「まほろばの疾風(かぜ)」(熊谷達也著)の文庫本が歴史小説フェアということで平積みになっていた.
とともに「風の陣-天命編」(高橋克彦著)も昨年暮に出版されていたようで,とりあえず購入だけはした.
「炎立つ」から10年以上になるが,古代奥羽地方の歴史に対する興味は未だに尽きない.

さて,「まほろばの疾風」は少し読み始めたところである.この作品の主人公は,大墓公阿弖流為,つまり高橋克彦氏の「火怨」と同じ人物を描いていることになる.
「風の陣」は第一巻である立志編から新刊書で読みつづけている.「火怨」「まほろばの疾風」の舞台となる時代の数十年前である.
「風の陣」には征夷三十八年戦争の発端となる人物,伊治鮮麻呂も登場している.
作家の解釈と創作によって人物像や背景が若干異なるのは当然のことであるが,
時間軸で言うと,既に道嶋嶋足(「風の陣」主人公)のような人物を輩出しているにも関わらず,
まだまだ導入部と言えど,熊谷氏の描き様は,あまりに奥羽を文明の立ち遅れた土地としているような気がしてならない.
もちろん,一般民衆の生活はそうかもしれないが,何万という朝廷軍に立ち向かうだけの智略を備えた人物が領袖となる人々である.
族長候補レベルの若者が,自ら山中で捕らえた熊を解体してその場で鮮血を飲むようなことをするのであろうか.

高橋氏は,おそらく「風の陣」と「火怨」を矛盾無く繋がった物語とするのではないかと期待しているが,
熊谷氏は,既に繋がっていないようである,伊治鮮麻呂を描いた「荒蝦夷(あらえみし)」(文庫化されてから読もうと思う)では,阿弖流為の人物像が全く違うということである.

何にせよ,本筋に入っていくのはこれからである.
読後に「火怨」と「まほろばの疾風」の作品比較を行ってみたいと考えている.

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2005年1月15日 18:51に投稿されたエントリーのページです。

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