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難解な物語

『∀ GUNDAM(ターンエー・ガンダム)』TVシリーズは,なかなか放送の時間帯等々の問題があって細切れにしか観られず,
よく話の中身まで見えなかったが,劇場用として編集された「地球光」「月光蝶」をようやくビデオソフトで観ることが出来た.
∀ GUNDAMはデザイナーがシド ミードで,ガンダムのあの兜の前立てに相当する特徴的な“角”がダリの口髭のようにデザインされ,
賛否両論があったし,実際に私も旧来からのファンとしてかなり違和感を覚えていたのだが,プラモデルとして立体化されたものを目にしたときには,
さすが実際の工業デザインも手がけるシド ミードであると感心した.
コメディやギャグでもないが,殺伐とした感じがなくどこまで行っても牧歌的でありながら,
物語自体は,非常に複雑で難解.生半可な見方ではなんのことかさっぱり分からないだろう.
しかし,やはりガンダムという作品は富野由悠季監督でないと物語の重みが生まれないような気がする.
今まで多数“ガンダム”を題に冠した作品が作られてきたが,富野監督が作った世界の中でしか動けておらず,
“ガンダム”世界を新たに創造できるのは富野監督唯一人であることが分かる.

富野由悠季という演出家の名を意識して作品を観たのは『機動戦士ガンダム』が初めであるが,
後から『鉄腕アトム』はじめTV向けアニメーション黎明期から第一線で活躍し続けていることが次々に分かってきた.
再放送されたり,懐かしがってビデオを借りてきた古い作品の演出に富野喜幸(当時)の名を実によく目にするのである.
しかも,“子供向け”作品で評判が悪かった回に限って富野演出だったのである.
例えば『勇者ライディーン』前半で全く視聴率が振るわなかったかったのに,後半,監督が富野氏から交代すると数字が良くなったとか.

氏は,ロボットアニメが玩具メーカーの販促でしかないと言う慣習にかなりの憤りを演出家として覚えていたそうで,
『伝説巨神イデオン』では,設定を頭頂高105mと極端に大きくし,機械でありながらエネルギー源が人智を超えるもので,
しかも主人公たちの意のままにならず,徹底的に悲劇が襲うという非常に暗い作品となり,結果的にTVシリーズは未完のまま打ち切りとなった.
しかし,玩具ターゲット層から外れるファン達の要望で劇場版で完結まで描かれることになった.

『機動戦士ガンダム』はブームに乗って見始めたに過ぎなかったが,『伝説巨神イデオン』で描かれた人間の業の深さ,
ある種,宗教神話的な広がりさえも感じさせる作品の凄味を見せられて富野由悠季という演出家の執念を感じたのである.

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2004年11月 2日 19:00に投稿されたエントリーのページです。

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