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ちゅうぶるどう

 私は中古レコードをあさるのが好きである.旧譜となると,まず,簡単に見つかりそうなら中古盤が無いかどうかから始まる.
何かを始めるに当たっては何かのきっかけが大抵あるものである.
私の中古レコードあさりはどこから始まったか.
それは高校生の頃にさかのぼる.
当時,渡辺美里が好きで,彼女がパーソナリティを務めていたラジオ番組等は欠かさず聞いていた.
そして,コンサートツアーのサポートメンバーのミュージシャンもゲスト出演することもしばしばあった.
同時に宮原学も好きで,彼の番組も当然聴いていた.
 彼らが相棒として頼り切っていたミュージシャンが,当時からアレンジャー兼ギタリストとして頭角を現し,
現在では大御所アーティストの信頼も厚く,自らも“山弦”で活躍する佐橋佳幸だった.
私は当時,ロックバンドの中での彼のアコースティックギターの使い方が非常に気に入っていた.
エレクトリックギターのプレイでも安定したリズムで,リードプレイは反対に良い意味で荒削り,ワイルドな演奏だった.
それぞれの番組中で佐橋がデビューした頃の話も出ていた.
彼は“UGUISS”という,ヴォーカルに山根栄子を擁したアメリカンロックスタイルのバンドでデビューした.
ところが,デビューアルバムの『UGUISS』をメンバーの誰も所有していないと言うのである.
そういう話を聞くと,そのレコードを聴きたくなるのが人情である.
 “UGUISS”は既に解散しており,年数も経ているので当然廃盤である.中古レコードを探すしか方法はない.
ミナミのアメリカ村や,東心斎橋,キタの大阪駅前ビルなど,めぼしい中古レコード店の密集地はほとんど回ったが見つからなかった.
探しているうちに,横目に入るもので気になるレコードは片端から買っていった.
当時既にCDプレーヤーは所有していたが,何せ,新品CDの1/3以下の価格で盤質良好や新品同様のLPが入手できるのである.
中古で買ったアナログ・レコードやCDの数は増えていったが,当初の目的の“UGUISS”は見つからないまま10年が過ぎ,
中古レコード店巡りのきっかけになったレコードのことなどすっかり忘れていた.
 そのころにはERIC CLAPTONのアルバムなどは,最新から『FIVE LIVE YARD BIRDS』や『What's Shakin'』に至るまで,オリジナルアルバムの95%までがそろっていた.
ところが,ある日,家から自転車でも15分程度のところにある,よく行く中古レコード店の邦ロックコーナーで何か面白そうなのはないかなと,LPを繰っていると,
ジャケットの左上方にペンで手書きしたような“Uguiss”の文字.裏ジャケットには若き日の佐橋佳幸や山根栄子らメンバーの写真.
間違いはない.あまりの驚きに左胸が一瞬痛み,そのレコードを持った両手が軽く震えた.
本人達すらもっていないレコードが,大阪の田舎町の隅にあるような中古レコード店で見つかったのである.
 実に10年越しである.

 他にもアン ルイスのアルバムで,現在は廃盤でチャー・ファンには垂涎の『HEAVY MOON』,CDを一般市場で探すのは非常に困難,
そのため,ネットオークションにかかると万単位の価格が付く.
これが,中古アナログ価格で1600円で普通に並んでいるのである.

 廃盤や品切れになって,欲しいLPやCDが入手できないと諦めてらっしゃる方も多いかと思うが,
ことあるごとに中古店を覗いていれば,何となく見つかってしまうものである.
しかも,見つかることを切望しないことである.一所懸命にならずに気長に,何となく,というだけである.

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2002年6月 8日 10:38に投稿されたエントリーのページです。

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