江戸の仇を…
もう,はるか昔のことになるが,小学校一年生の国語,漢字テスト.
漢字の読みで,「七」の右に括弧が二つあり,ひとつは「なな」もうひとつを「ひち」と書いて×を食らったことがある.
しかも,何が間違いかがまったくわからなかったし,何の説明もなかったのである.
生まれも育ちも中河内.普段の発音のとおりに書いたまでである.
戦後すぐほどはひどくはないながらも,昭和50年代,標準語化 が進められていた頃である.
それから30年.漫才ブームや吉本新喜劇のブームを経て上方落語ブームである.
先ごろ,天満天神繁昌亭で定額給付金と同額(昼席前売り6回分)で7回入場できる回数券「七度(ななたび)キテネ!」が売り出されたことが新聞記事になっていた.
この回数券の名称は,上方落語の演目「七度狐」にちなんでいるのだが,その新聞記事には「ひちどぎつね」とルビが振られていた.
決して「しちどぎつね」ではない.しかも朝日新聞である.
繁昌亭のオープンを機に出版された「上方落語家名鑑」の上方噺厳選120本でも,さ行ではなく,は行で「七段目(ひちだんめ)」や「質屋蔵(ひちやぐら)」と記されている.
30年あまりを経てようやく認められた気がする.
まさに江戸の仇を長崎で討った気分である.
IMEで関西弁モードがあるものもあるのだから,“じ”と“ぢ”,“ず”と“づ”に加えて,“し”と“ひ”のあいまい変換も加えてほしいものである.