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寝ずの番

原作:中島らも
監督:マキノ雅彦(津川雅彦)

東京出張の折,新幹線車中で読もうと短編集『寝ずの番』を新大阪のブックス・キオスクで購入して乗車した.
津川雅彦がマキノ雅彦名義で第一回監督作品として制作した映画の原作である.
らもさんの本は学生の頃からエッセイを中心に漫画代わりに好んでよく読んでいた.
「らも咄」という創作落語の作品や自らも落語を演ることもあったので落語には造詣が深い.
そんなこんなで興味があって,この短編集を読み,映画ビデオを観た.
いままで,原作付き映画を観て,原作のイメージが損なわれていると思ったことが多かったが,本作はほぼ原作通り.
映画ということでアホネタに終始することなくホロッとさせるところを追加しつつも原作のおもしろさも殺していない.
長門裕之や笹野高史,岸辺一徳と曲者の役者ばかりである.面白くないはずがない.
昨今,話題の北野武や松本人志監督作品のように俳優・津川雅彦としては出演していない.
マキノ雅彦として監督のみである.

内容に関わることに少しふれると,上方落語の一門が登場人物である.
主演の中井貴一や木村佳乃というキャストを見て,江戸落語に置き換えているのかと思ったが,原作通りの上方落語ということでやや不安だったのだが,皆おおむね上方ことばがサマになっていた.関西出身の役者が多いので当然といえば当然である.
端々にちょっと違うというところもあったが立派なものである(あの芸達者なはずの堺正章を除いて…,大阪弁については1カット出演のイーデス ハンソンのほうが格段に上である).
ただ,残念なことに絶対にこの作品はテレビ(少なくとも地上波)では見ることができない.
性器を指す放送禁止用語が連発されるのである.しかもカットすればすむような場面ではない.話のキーなのである.
らもさんの作品としてはいつものごとく,であるが,マキノ映画の復活作品としてよくもこれが選ばれたものである.
もっと不可解なのが,この作品は芸術文化振興基金助成事業の補助を受けた文化庁支援作品なのである.
冒頭に木村佳乃のドライな濡れ場(?)はあるわ,クライマックスは女性陣も巻き込んでの下ネタのちょんこ節の歌合戦である.

少しでも上方落語の知識があれば,誰がモデルかは想像がつく.
長門裕之演じる笑満亭橋鶴とは,名前と「らくだ」を十八番とするその豪放磊落なイメージから,六代目笑福亭松鶴,そして石田太郎演じる落語作家の小田先生とは小佐田定雄氏であろう.

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2007年6月11日 17:05に投稿されたエントリーのページです。

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