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身内を評価しない日本人

 日本初の会社員ノーベル賞受賞者として島津製作所の田中耕一氏が熱狂的に話題を集めていているが,
2002年のノーベル賞の選考はかなり手が込んでいたそうである.
現在世界中で用いられている蛋白質の検査方法で田中氏が開発した手法があるのだが,
実は誰の発案かがはっきりと認知されていなかったそうで,ノーベル賞選考委員も誰が開発したかを血眼になって捜したという話らしい.
要するに日本国内ではもちろん認知されていなかったという証左でもある.
ノーベル賞受賞の報を受けて,文化勲章や国民栄誉賞の授与など言語道断である.順番が逆ではないか.

 他にも日本人が世界でもいち早く発見・開発したものが多数あるそうだが,そのいずれもが国内では評価されずに海外流出している.
ビタミンなどは日本人学者が発見し,“オリザニン”として発表したものの,学会では認められないどころか酷評されたそうである.
少し後にイギリス人学者が同様の研究で“ビタミン”として発表し,世界中で栄養素として認められたそうである.
乾電池もそう.ごく最近では,青色発光ダイオードもしかりである.

 国レベルだけではない,自分達の組織内のものは認めようとしない.
私も企業の技術開発部門に属しているが,同じようなことが経験として実感できる.
技術開発が完了して社内でアピールしても誰も見向きもしないし,問い合わせもこない.逆に使えないと非難されるのである.
ところが,業界紙等で報道された途端に社内から問い合わせが殺到するのである.

 エンターテイメントの世界ですらそうである.
私が高校生の頃から10数年に亘って憧れの対象としているロックギタリスト,Kenji Jammerこと鈴木賢司も,国内でよりも海外で評価され,活躍中である.
逆に日本国内でヒットチャートに登るギタリストが“日本を代表する”とか紹介されるが,実際のところ海外で通用するかというと非常に疑問である.
野球やサッカーに限っては日本で地固めをして,海外チームで,という道順が出来ているようだが,その他の分野ではそれが出来ないようである.
日本で通用しても海外で通用しないし,海外で通用するであろうものは日本では認めてもらえない.

 日本は,加点主義ではなく減点主義が主流であるから,とニュースワイド番組では分析しているが,果たしてそんな紋切り型の片付けかたでよいのだろうか?
もっと根源的だからこそ,気付かない理由があるはずである.それは日本人が美徳としている,“謙虚さ”である.
外国からも日本人の国民性として良い印象として評価されていることが,この謙虚さであり,日本人自身も誇りに思っているようだが,
この,身内を評価しないことが,誇りに感じているはずの“謙虚さ”の表裏一体のものであると気づいている人がいかほどいるだろう?
贈り物を差し出すときに「つまらないものですが」と言うアレに代表される謙虚さが,である.
もっとも,自信の裏返しは傲慢なので,傲慢と謙虚のいいとこ取りというのも非常に難しい注文ではあるのだが.

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2002年12月 9日 20:19に投稿されたエントリーのページです。

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