家庭用のダッチコーヒーを取り上げたときに,私が珈琲豆を仕入れる店は,数ヶ月ごとにセールを催すことについて少し触れた.
そのセールの時には入荷がまれなものが大抵安価で提供される.
ある時には,その店がネットオークションで落札したという“ドン・キホーテ”という銘柄が200g600円あまりで提供された.
店頭でオーダーすると真空パックして銘柄のラベルを付けてくれるのだが,
臨時商品なのでいつものラベルと違い,PCで自作してインクジェット・プリンタで剥離紙に印刷されたラベルだった.
普段店頭に並んでいる600円程度の珈琲豆だと,普通の点て方では雑味が目立つ上に甘みがあまり感じられない,味の奥行きに欠けるものが多い.
しかし,このドン・キホーテ,爽やかな苦みとほのかな甘みがよく引き立ち,雑味もほとんど出なかった.
しばらく使っていた200g1000円クラスのものに比べても,かなり美味しいものだった.
いくら高くて美味しいと言われているものでも,最初は良くても慣れてくるにつれて嫌な味が前面に出てくるのである.
“舌が肥えてくる”とは,こういうことを言うのであろう.良い味を感じるだけでなく,欠点を見逃すことができない.
落札したときは,当然,生豆のはずで,店で焙煎を行ってから店頭に並べていたはずである.
恐らく数100kgのオーダーで仕入れたものだろうが,なかなか入手できない銘柄のはずなのに,偶然にしろ相性の良い焙煎に仕上がったものである.
私は,自ら焙煎まで行うレベルには至っていないので,焙煎に関しては何とも言えないが,
それぞれの豆が持つベストな焙煎ポイントがそれぞれにあることは想像に難くない.